記事一覧

ブライトリング AVI Ref.765 1953リ・エディションを1週間レビュー


再始動した素晴らしい50年代のパイロットウォッチが未来を照らす。


ノスタルジアは、私たちが過去を振り返る際に強い影響力をもつ‐歪められ、理想化された記憶のみが残る。


この時計を見ると、50年代へのノスタルジーを感じないだろうか?

 それを理解することは、歴史的なデザインにインスパイアされた現代の時計をどのように分析するかの糧となる。歴史的なリファレンスのオリジナルモデルを評価する際には、必ずしもデザインの詳細を評価するのではない。その時計が生まれた時代背景を評価するのだ。例えば、ロレックスのポール・ニューマン デイトナ。ダイヤルの視認性は酷く、ヴィンテージウォッチとしての作りは、現代の時計と比べてもそこそこといった程度だ。それでも、記録的な値を付けて以来、おそらく最も追い求められているヴィンテージウォッチだ。それは“キング・オブ・クール(訳注:P.ニューマンを指す)”がこの時計を作ったからだ。私たちは往々にして、時計そのものではなく背後にあるストーリーを買ってしまうものだ。しかし、それは悪いことではない。時計にまつわるストーリーの方が、時計そのものよりもはるかに面白いことが多いのだから。


新型(左)と旧型(右)のブライトリングAVI Ref. 765。

ADVERTISEMENT
 この現象は、過去のデザインを再解釈して新しい時計を作る際に、メーカーに大きな裁量を与えることになる。そして、その物語性やノスタルジアに囚われ冷静さを失うと、疑問符のつくデザインでも許してしまいがちになる。

 実は、今回紹介するブライトリングAVI Ref. 765 1953 リ・エディションが面白いのは、そこなのだ。50年代の時代背景を抜きにしても、時計そのものがとてもよい。この時計を押しつけるために歴史を利用しているわけではなく、デザインを再解釈する際に、現代性を手抜きするための言い訳として使ってもいない。この時計は、ブライトリングが商業的に通用するリファレンスとして生産する、理論上1953年発売のオリジナルモデルに限りなく近い時計である。

【関連記事】:実用性重視の腕時計